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危ない危ない。危うく乗せられるところだったぜ。一先ず良哉に返す言葉はこれだ。
「分かった。交渉決裂だな」
「ほほう、逃げるのか?」
「何か根本的に間違ってるぞおい」
「……ちっ」
「舌打ち! 舌打ちしたよな今!?」
声を荒げてツッコむも、良哉は席を立って成績表を取りに教卓へと歩いていく。
チラッと見えたが、その横顔は満面の笑みに染まっていた。戻ってきた時は蒼白だったが。
てか、俺に見るなと言いつつ自分は見たのかよ。ばっちり保険かけるつもりだったなこの野郎……!
「は、ははっ。改めて思ったんだけどよ、やっぱ何でも勝負に持っていくのは良くねぇな! それに想介って自分の成績を教えるのを嫌がるタイプだろ? な? な!?」
無駄に前向きで強引な言葉と、引き攣った笑顔。もう何と言うか、非常にコメントしずらかった。
◇
「あー……そうだ」
成績表返却に伴う特有の喧騒が収まり、クラスメイト全員が再び席に着いた時だった。新崎先生が実に面倒臭そうに頭を掻きながら口を開いた。
「ちと今回は、今まで連絡しようと思ってたが、いつの間にか脳内の遥か彼方に飛ばされてた事柄がある」
ただ忘れてただけだろ、と反射的にツッコミが出かけたが抑え、耳を傾ける。
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