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「うわ…」
思わず発した言葉がそれだ。そしてそれが僕の心の正直な言葉だ。
テーブルの上には一枚の紙が置かれていた。
その派手で奇抜すぎるデザインのせいで一体そこに何が書かれているのか全くわからなかった。
「何だよこれ」
そう言って僕はその紙を手に取った。
(満天サーカス団)
赤や緑や黄といった極彩色漂うその紙に赤字でそう書かれていた。文字通りこれはサーカス団がこの町にやってくるという宣伝のチラシで、よく見ると写真が掲載されており、そこには熊が大玉に乗っていたり酷く目つきの悪い虎が火の輪をくぐっていたりと、テレビでよく見るサーカスと何ら変わりのないものが写っていた。
とりあえず僕は目頭を押さえずにはいられなかった。
「目痛い…」
「何で赤字で書くんだよ。それに色合いが邪魔して写真見にくいし。大体満天サーカス団って…。チラシのデザインは0点じゃん」
しょうもない独り言を漏らしてチラシを元の場所に置き、飲み干したコーラのボトルをゴミ袋に放り投げた。
別に全く興味が無いわけではないのだ。
そう、サーカスの事だ。
むしろ興味がある。
そもそもこんな小さな町にサーカス団がやってくるなんて僕は初めて聞いたし、僕自身サーカスを生で見た事がなかった。
そしてこんな宣伝効果無さそうなチラシを配布するサーカス団を一目拝んでみたいと思っている。
いや、行きたいと思わされているということは寧ろ宣伝効果抜群なのだろうか?
そしてサーカスが行われている期間が昨日と今日の二日間。時刻は十四時からなので、今から向かえば上演時間には間に合うのだが流石に今更向かったって当日券が残っているとは思えないし…。
半ば残念そうな溜め息を漏らし辺りをぐるっと見渡した。
するとチラシの側に置かれていた新聞の下から二枚のこれまた奇抜な色をした何かがはみ出していた。
「あ……」
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