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乗車駅から三つ離れた駅で電車を降り、僕はタクシーに乗車しサーカスが行われる会場まで向かった。
車内では胸躍る想像を膨らませていた。一体どんな芸が見られるのだろうか、どんな動物が出てくるのだろうか。
既に熊と虎が出てくる事はチラシを見たのでわかっている。
とするならば後は犬が数匹二本足で立ち列をなし行進でもするのだろうか。
それとも玉に乗った象があの長い鼻でフープでも回したりするのだろうか…。
想像は尽きない。寧ろどんどん膨らんでいくばかりだ。
そんなにサーカス好きだったの?と、自分に聞きたくなる位だ。
確かにサーカスは好き嫌いで言われれば「好き」だろう。しかし実際はそんなにワクワクするほどではないだろう。
ではどうして?
それは不思議と僕自身にもわからないのだ。
ただ何となく、サーカスだけではない気がしている。
つまり、「サーカス以外でも何か素敵な事があるのでは」という期待も少し持っているのが事実なのだ。
それはどんな事でもいい。どんな些細な出来事でもいいのだ。ただ、今僕を取り巻いている現実とは少し違ったアクションが起こってくれると嬉しいという位の思いなのだ。
そうこう考えている間にタクシーは目的地へと到着した。
開演時間までまだ一時間ほど余裕があったため、僕は近くを散策しようと目的もなく歩き出した。
周囲は閑散としており、住宅というものは無く目立つのは寂れた商店やビル、所々にコンビニエンスがある位だ。
何か冷たい飲み物でも買おうと、僕は道路の向かいにあるコンビニエンスに行こうと横断歩道を渡っていた。
その時だった。
「こんにちは」
後ろから急に声を掛けられた。
「え!?」
振り返ると、そこには一人の少女がいた。
クリーム色のショートヘアーに白いワンピースを身に纏った少女だった。
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