出会う

4/8
前へ
/26ページ
次へ
「お礼って言っても……何をすればいいのさ?」 そう言うと彼女はコンビニエンスを指さして「コーヒー」と一言言った。 そんな物でよければと、僕と彼女はコンビニエンスで微糖の缶コーヒーを二本買った。そして店を出て二人でコーヒーを飲みながら辺りを散歩する事になった。 「それで、あなたサーカスを見に来たの?」 コーヒーを飲みながら彼女は僕にそう尋ねてきた。 「うん、そうなんだ。何だか楽しそうだなって……」 「そう……。ねぇ、連れの人は一緒じゃないの?」 「え、連れなんていないよ。僕一人だけで来たんだ」 そう言うと彼女は目を見開き、「それじゃあ入れないわよ」と一言言った。 「え、どうして?」 「だって、それペアチケットじゃない。だから一人じゃ入れてくれないわ」 そう彼女に言われて僕は慌ててチケットを取りだし、彼女の指さす所を見てみると確かにそこには「ペアチケット」と書かれていた。 「確かに書かれてはいるけど、別にペアで使わなくても……一枚でもいいんじゃないの?それくらいの融通はきくでしょう」 僕は焦ったように彼女に聞いた。 「いえ、駄目なの。一人で見るのなら一人用のチケットじゃないといけないわ」 そう言われて僕は深く肩を落とし大きな溜め息をついた。一体何のためにここまでやって来たのかわからないではないか。 せっかく胸躍らせてここまで来たのに、まるで熱く火照った体に大量の氷水を浴びせられたかのようだ。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加