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「お礼って言っても……何をすればいいのさ?」
そう言うと彼女はコンビニエンスを指さして「コーヒー」と一言言った。
そんな物でよければと、僕と彼女はコンビニエンスで微糖の缶コーヒーを二本買った。そして店を出て二人でコーヒーを飲みながら辺りを散歩する事になった。
「それで、あなたサーカスを見に来たの?」
コーヒーを飲みながら彼女は僕にそう尋ねてきた。
「うん、そうなんだ。何だか楽しそうだなって……」
「そう……。ねぇ、連れの人は一緒じゃないの?」
「え、連れなんていないよ。僕一人だけで来たんだ」
そう言うと彼女は目を見開き、「それじゃあ入れないわよ」と一言言った。
「え、どうして?」
「だって、それペアチケットじゃない。だから一人じゃ入れてくれないわ」
そう彼女に言われて僕は慌ててチケットを取りだし、彼女の指さす所を見てみると確かにそこには「ペアチケット」と書かれていた。
「確かに書かれてはいるけど、別にペアで使わなくても……一枚でもいいんじゃないの?それくらいの融通はきくでしょう」
僕は焦ったように彼女に聞いた。
「いえ、駄目なの。一人で見るのなら一人用のチケットじゃないといけないわ」
そう言われて僕は深く肩を落とし大きな溜め息をついた。一体何のためにここまでやって来たのかわからないではないか。
せっかく胸躍らせてここまで来たのに、まるで熱く火照った体に大量の氷水を浴びせられたかのようだ。
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