序章

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4月6日、水曜日。 今日は神城学園の入学式だ。 校門から新入生の顔が続々と見える。 「2年前、俺はあの校門を潜(くぐ)ったんだよな?」 とは言っても、あまり記憶には残っていない。 むしろ、1年前の2月に静流を殺したこと。 そして、今年の2月に兄である刹那を殺したことの方が印象的だ。 当たり前か。 自分にとって大切な者を2人殺したのだ。 救うために殺した。 救うために殺さなければならなかった。 殺さなければ救うことは出来なかった。 「なーに、感傷に浸ってるんだよ?」 「守か」 「守か、じゃねーだろ? 辛気くさいんだよ。何とかしろ」 「む。それはすまん」 まさか、暗い雰囲気が表面に現れているとは思いもよらなかった。 この事は考えないようにしよう。 「おい、そろそろ時間だぞ!」 「戟か。今すぐ行く!」 「颯、ちょっと待ってくれよ」 「ははっ。ついて来やがれ!」 「くっそー!」 こういうありふれた日常は大好きだ。
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