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さて、そんな訳で旅をしているのだが、これまで立ち寄った街も同じ様な有様だった。
そんなことが在りうるはずが無いのだが、事実なのだから否定しても仕方が無い。
とにかく、旅を続けているうちに、今、大都市にたどり着いたのだった。
大都市・ニューヨーク。
今まで立ち寄った街の中では、間違いなく最大の規模を誇っている。
それと比例するように、人口や情報流通も、当然ながら多い。
そう、そのはずなのだが・・・。
「ハァ・・・」
また溜息が出てしまっていた。
そう・・・、ここもどうやら今までと同じ惨状の様なのだ。
静か過ぎるのだ。
本来ならばこれだけの大都市だ。
常に喧騒が止まないのが当たり前のはずである。
が、それがない。
いくら俺が少し離れたところに居たとしても、それが聞こえないという事は無いだろう。
つまり、これまでと同じなのだ。
脱力感が身体を襲った。
長旅をしているにも関わらず、その成果が報われないのだから当然だ。
ひとまず、俺はタバコを取り出し、一服することにした。
そうすれば少しは気も紛れるだろう。
「・・・ふぅ」
煙を吐き出し、その煙を何気無しに目で追いつつ、これからの事を考えていた。
住家へ戻ってしまおうと何度思ったことだろう。
しかし、それでは現状を打開する事など出来なくなってしまう。
結局は、進むしか無いのだ。
とりあえず、これだけの大都市なのだ。
どこかに人が居る可能性だって捨て切れはしない。
居なかったとしても、何か情報を得ることがあるかもしれない。
可能性に過ぎなくとも、何も行動しないよりはまだマシだろう。
考えている内に、タバコの火が根本まで来ていた。
それを落とし、踏み付けて、俺は大都市への入口へと向かった。
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