『』

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『ふふ、お兄ちゃん、どう?似合うかな』 赤い。 ひたすら赤い。 まるで燃えるようだと、不謹慎ながら思った。いや、それも後悔の慚愧か。ならば慟哭する獣がいないだけましというもの。 後悔など先にたたないのならばいらんだろうと意外に冷静な頭が断じる。冷静ではある。 ただ意外にこういう時人間はどうでもいいことを考えるのだと初めてしった。 『お兄ちゃん?』 近付いてくる。 さて・・・・・・どうしたものか。悪夢ならばとっとと覚めてほしい。そうでなくともさっさと終われ。見ているだけで吐き気がするわ。 伸ばされる手を払い除ける。 驚くそれの顔を疲れた頭で認識する。 どうしてこうなった。 問い掛けようが答えなど返ってくるわけもなく。 ただ俺のため息だけが鼓膜を震わせた。
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