夜靄夕霧

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「若っ!?」 「なんだよ、アスカ。大きな声出すなよ」 すっとんきょうな声をあげたアスカを横目で見る。 「見逃してあげるって言ったじゃない!?」 「見逃したろ、俺は」 俺は約束を守った。手当てもしてやったし、それ以上の暴力を振るうこともしなかった。例え、その後で何が起ころうが俺の知ったこっちゃないのである。 少年は運が悪い。――それだけの話だ。 「若ちゃん、仕事変えない?」 「急になんですか、明海さん」 「由実のところで時々働くより、私のところの専属にならない?若ちゃん、間違いなくこっち向きよ」 「・・・・・・俺は本格的にそっちに関わるつもりはありません。今ぐらいが性にあってるんです」 「――そう。ま、気が向いたらいつでもいいから、考えてみてね」 曖昧に頷いて、俺は苦笑を浮かべた。 「アスカ」 「・・・・・・何?」 「あんまり深く考えんなよ。――時間の無駄だ」 人生、余計なことを悩んでいたら疲れるだけだ。ある程度は気にしない方が楽なのだから、そうした方がいいに決まっている。 まぁ、割り切れるかは個人によるわけだが。
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