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人生の哲学とは裏腹に、安穏な生活とは無縁に近い俺の日常。
夜勤明けのうろんな意識をぶっ叩いたのは、声を作り忘れた明海さんの低く野太く威圧感があり、よく通る男前な声だった。
やべぇ。兄貴って言いたくなった。マジで惚れそうだ。
「若ちゃん、不味いことになったわ!」
「どうしたんですか?落ち着いてください」
「アスカちゃんがいなくなっちゃったのよ!!」
「・・・・・・はあ!?」
話を聞いてみれば確かに厄介だった。明海さんが不味いと言いたくなるのも頷ける。
俺が見逃した少年は明海さんのところの若い衆に運悪く拉致られて、まぁかなり痛い目を見ることになったそうなのだが、その後の少年については関係ないので割愛しよう。
その少年がゲロったことを若い衆が明海さんに報告していたところ、運悪くアスカ出勤。聞かれたくないことを聞かれてしまい、現状に至る。
「明海さんが悪いよ、それ。話するならちゃんと場所選ばないと」
「緊急だったのよ。私も油断していたってのもあるけど」
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