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「雅彦!
こっちだ!」
病院につくなり慌てふためく父さんの姿が目に飛び込んできた。
うちは父子家庭で野郎三人で暮らしている。
「何だよ。
お兄ちゃん、そんなにやばいのか?」
父さんの慌てようがハンパなく俺も内心動揺していた。
「……今処置中だよ。
まだ意識が戻らない」
父さんは必死で冷静にいようとしているが声が震えている。
「そっか……」
小さく俺は頷いた。
『死んじゃえ』
お兄ちゃんに言った言葉がふと甦った。
ホントに死んじゃったら俺……。
「……なぁ、父さん。
何で兄ちゃん事故にあったの?」
俺が第一に思った疑問だった。
慎重で用心深い兄ちゃんが事故にあった事が不思議で堪らなかった。
「これ……」
父さんは紙袋から真新しいサッカーボールをだした。
「何だよ!
今はそれどころじゃないだろ!」
俺はついつい大声をだしてしまった。
サッカーボールよりお兄ちゃんを心配しろよ!
「……これを拾いに行った時に、飛び出してきた車にはねられたという目撃があってる」
静かに父さんはいう。
「何でそうまでして……」
何でそんな必死だったんだろう。
「昨日、雅彦のサッカーボールを駄目にしたから買いに行くといってその帰りに……」
父さんはサッカーボールを紙袋にしまい俺に渡した。
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