言葉……

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「雅也、大丈夫か?」 横たわるお兄ちゃんに父さんが話し掛ける。 「うん、どうにか。 迷惑かけてごめんな」 兄ちゃんは申し訳なさそうにいう。 「ごめん! ごめんよ! 俺が『死んじゃえ』なんて行ったから……」 お兄ちゃんの顔を見たら何だか涙がでてきて謝った。 「泣くんじゃないよ。 悪かったのは俺なんだからさ」 そう言ってお兄ちゃんは俺の頭を優しく撫でた。 「お兄ちゃん、コレ……」 俺は持っていたサッカーボールをだした。 「あっ……」 びっくりしてお兄ちゃんはサッカーボールを見つめた。 「父さんから聞いたよ。 馬鹿だよ、兄ちゃん。 サッカーボールより兄ちゃんの方が大事に決まってるじゃんかよ」 俺はお兄ちゃんの手をギュッと握った。 「……知りたかったんだよ。 雅彦が夢中になってるもの。 家族だからな」 真面目な顔をしてお兄ちゃんはいう。 「兄ちゃん…… 兄ちゃ……」 涙が止まらない。 次から次に出てくる。 「泣くなよ。 退院したらサッカー教えてくれよな」 にんまり笑いお兄ちゃんは俺の涙を拭いた。 お兄ちゃんの手、大きくて温かい。 小さい時も俺が泣くとお兄ちゃんは優しく笑って元気づけてくれたっけな。 「うん……。 お兄ちゃん運動オンチだけど容赦しないからな」 悪戯っぽく俺はいう。
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