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――普通が一番。
じいちゃんが俺に残してくれた言葉の一つだ。
ごめんじいちゃん。俺、普通ではないみたいです……。
俺の名前は赤嶺リンジ。縦縞高校一年二組に在籍している。見た目はどこにでもいる、目立ち過ぎず地味過ぎず、それはそれは本当に普通の高校生だ。
「う、うぅ……視界がぼやけていく」
そんな至って普通の俺が今、横断歩道で倒れこんで普通ではない言葉を呟いた。というよりも横断歩道で倒れ込んでいるという状況が既に普通ではない。そして俺は決して事故や事件に巻き込まれこんな道端に倒れているわけではないのだ。
その時だった。
「もし間違えていたら悪いのだけれど……あなたは死にたいのかしら?」
薄れ行く意識の中、とんでもない言葉が俺の鼓膜に飛び込んできた。何となく聞いた事のある声。でも友達にこんな声の人はいなかったはず。というか俺に女子の友達はいない。
「いや、死にたいわけじゃないです」
とりあえず返事をする。相手が誰かわからないので念のため敬語を使っておく。もしかしたら年上かもしれないしな。
「そう、ならここは危ないわよ」
そんなことは言われなくたってわかっている。ここは学生の通学路であると同時に、サラリーマンの車通勤、自転車通勤の抜け道として、道幅に不相応な人数が利用している道路で、今俺が倒れているのはそこの横断歩道のど真ん中だ。
「そうね、とりあえずここは危ないから……」
言って俺の制服の襟を掴んだと思ったら、くいっと俺を持ち上げそのまま横断歩道の向こう側目掛け、ぽいっと投げた。
俺はゴミか。というか……。
「どんだけ力あんだよぉぉぉうぉぉぉふぼぐっ!」
見事横断歩道から生還……いや、横断歩道を越え歩道脇の石垣へ激突。先程まで倒れ込みフェードアウトしかけていた意識が一気に再起動する。
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