登下校の苦難

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 「いってぇ……」 呟いて身体を起こす。  「大丈夫そうでなによりね。それより、あんな場所で寝ていたら危ないじゃない」  俺の横に俺をゴミの様に投げた張本人の女が来て言った。  「どう見ても大丈夫そうではないだろ! 俺石垣に激突してるしっ!」  言って横を振り向く。男を軽々と投げるなんて一体どんなゴリラ女だよ。そんな事を思いながら女の顔を見た。いや、この場合は見つめたの方が正しい言い方かもしれない。  俺がゴリラ女だと想像した人物は、あまりにも想像とは掛け離れていたからだ。銀髪を肩下辺りまで伸ばしたストレートヘアー。そして綺麗な顔立ちと程よく細いスタイル。正直雑誌で見るモデルの人達よりかわいいと思った。リボンの色が青って事は2年生か。  「そんな事より、あなた名前は?」  そんな事? 今そんな事って言ったよこの先輩。人が石垣に激突した事を『そんな事』の一言で片付けちゃったよ。まあ、一応倒れていたところを助けてもらったので聞き流すことにしよう、あくまで一応。  「な、名前は赤嶺リンジ……です」  「そう。まあそんな事はどうでもいいのだけれど、放課後、部室棟三階の一番奥の部屋へ来なさい。私があなたの悩みを解決してあげるわ」  「え……?」  「私の名前は水蓮寺梓。それじゃ、また放課後に、リンジ」  言って走り去った先輩。俺の返事も聞かずに……。  放課後に部室棟かぁ。行くべきなのかな。そもそも今日会ったばかりの人を信用していいものなのか。でも……先輩可愛かったしなぁ……水蓮寺梓先輩、か。そんな事を考えつつ、遅刻ぎりぎりだった俺は学校への道を歩き始めた。
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