登下校の苦難

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 教室に着くやいなや、俺はクラスメートの二宮直人に水蓮寺梓先輩の事について尋ねた。  というのも、二宮は入学して一ヶ月足らずの現在までに一学年から三学年までの全ての女子生徒を事細かにチェックしている。チェックしているだけではなく、顔の可愛さ、スタイル、性格、頭の良さ、運動能力、この五つの部門での部門別ランキングもあるらしい。男子の間では、歩く女子広辞苑と呼ばれ崇められている。一言で言えば……変態だ。  とにかく俺はその変態……じゃなくて、二宮に水蓮寺梓先輩がどんな人物なのかを尋ねたわけだ。  「赤嶺、君は水蓮寺先輩を知らないでよく縦縞高校の生徒を名乗れるね。水蓮寺先輩は一年生の後期から生徒会長を務める才色兼備なお方さ。四部門でランキング一位の誰もが認める高嶺の花の様な人だよ」  そんなにすごい人だったのか。というか生徒会長といえば一ヶ月前の入学式に歓迎の挨拶をした人じゃないか。あの時はどんな人かとか、どんな挨拶をしてるのかとか、そんな事はどうでもよかったから特に生徒会長の事なんて考えていなかった。  つまり聞き覚えのある声だったのはそういうわけか。これで納得だ。  「それだけ分かれば充分だ。ありがとな、二宮」  信用できる人みたいだから放課後部室棟に行ってみる事にしよう。横断歩道から石垣まで投げられた時は、『コイツは超人かっ、いや変人かっ』なんて思った事は心の中の物置に厳重に鍵を掛けてしまっておこう。  「赤嶺、僕の事は二宮ではなく……スケベェと呼んでくれ」  なぜか誇らしげな顔で言う二宮。  「お、おう。分かった。そういえば二宮、水蓮寺先輩は四部門で一位って言ってたけど、全部で五部門だよな? どの部門で一位が取れなかったんだ?」  「…………」  「あ、スケベェ」  「水蓮寺先輩が唯一ランキング一位を逃した部門、それは……スタイル部門さ」  「スタイル部門? でも水蓮寺先輩ってモデルみたいに細かったような……?」  「B」  「ビー?」  言っている事が理解出来ない俺の様子を見た二宮。  「水蓮寺先輩の胸、Bカップ」  そういう事か! スタイル部門は細いだけではなく、胸の大きさも重要なんだな。
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