登下校の苦難

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 「悩みって……水蓮寺先輩は俺の悩みに気付いたんですか?」  俺が横断歩道で倒れていた今朝の……あの一時の会話や態度だけで俺に悩み事があるということに気付いたというのか? いや、悩み事に気付くくらいそう難しい事ではないか。  「あんな所で倒れていたら普通誰だって気付くわよ。それにあの時リンジは意識があったし貧血でもなさそうだな、と私は考えたのよ。悩みっていうのも、おおよその予想はついてるわ」  縦縞高校生徒会長水蓮寺梓。一年生の後期に生徒会長就任の実力は伊達じゃないらしい。とんでもない天才だ。  ずっと誰にも相談できなかった悩み、少し恥ずかしく隠してきた悩み、それに気付いてくれた水蓮寺先輩。  「そ、そのっ、俺の悩みはどうやって解決してくれるんですか?」  「そんなの簡単じゃない。私が友達になってあげるわ」  …………。  ……。  どういう意味だ。なぜ水蓮寺先輩が俺の友達になるのか、友達になると解決するのかが俺には分からない。いや、頭の良い水蓮寺先輩だ、友達になった方が解決に近いと判断したのかもしれない。俺としても現在学校内で女子の友達がいるわけでもないし、それに水蓮寺先輩は皆が高嶺の花と思う存在。その人が友達になってくれるなんて、すごく光栄な事だ。まあ、水蓮寺の言い方が『なってあげるわ』などと完全に上目線だったのが少し引っかかるが、今は気にしない。  「それじゃ、宜しくお願いします。水蓮寺先輩」  「よろしく」  「あ、友達だったら『先輩』とか呼ぶのも変な感じしますね」  「それもそうね。それなら今から私の事は……『水蓮寺先輩様』とでも呼びなさい」  真顔だった。  「……は?」  とりあえず一旦目を閉じて考えてみよう。
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