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─コトンッ
「お疲れ。」
カウンターでうなだれていた私の目の前に、私が作った物ではないケーキが置かれた。
「え?」
驚いて顔をあげると、カウンターの裏側でコーヒーを淹れるりっちゃんの姿。
「これ…。」
「俺が作った。」
イチゴの入ったロールケーキ。小さい頃からの私の大好物。
「好きだったろ?イチゴの入ったロールケーキ。」
淹れたてのコーヒーをケーキの横に置いて微笑むりっちゃん。
覚えててくれたんだ。
嬉しくなって、思わず笑みが溢れる。
「ありがとう。頂きます。」
一口食べてみると、甘いクリームとふわふわのスポンジ、
後から来るイチゴの酸味が程よく溶けて、さっきまでの疲れはなくなるような優しい味だった。
「美味しい!!」
りっちゃんはケーキも作れるんだ…。
なんかすごいな。
感心しながら、りっちゃんの方を向くと、
コーヒーを淹れながら私の方をみて微笑んでいた。
ドキッ──!!
初めて私に向けられた、りっちゃんの優しい笑顔に思わず胸が高鳴った。
顔がみるみる熱を帯びていくのがわかった。
「そんなにうまい?」
りっちゃんは私が食べていたフォークに、ロールケーキを少し切って自分の口に入れた。
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