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なに…これ…。
そんな切ない声で聞かれたら、はぐらかせない…。
だって今まで聞いたこともないくらい切なくて泣いているような声だから…拒めない。
「あのね…りっちゃん…」
私は意を決して話始めようとしたその時──
「なんてね。」
りっちゃんはまた私の言葉を遮ってそう言うとパッと腕の力を弱めて私を解放した。
呆然とその場に立ち尽くしながら目線だけりっちゃんを追うと、
私に背を向けたりっちゃんの背中はどこか寂しそうな感じがした。
りっちゃん…もしかして寂しかったの…?
私がりっちゃんを避けてること、気にしてたの?
そう聞きたかったけど、うまく切り出せなくて、
店から家の中に消えていくりっちゃんの後ろ姿をただ黙って見守っていた。
律人は、なんとか冷静さを保たせて、家の中に入った。
いや、逃げたと言う方が正しいかもしれない。
「なにやってんだ…俺。」
自分のしたことに後悔して、壁にもたれながら頭を冷やすのだった。
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