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こうして、万年新婚夫婦な両親は1年間の
世界一周旅行に出掛けてしまった。
私とお店と意地悪なりっちゃんを残して…。
―翌日―
早朝、ウキウキな両親を見送り、
学校に行くまでまだ時間があったので、
ケーキの仕込みをすることにした。
「はぁ~…。」
さっきから出るのはため息ばかり。
お店…、やっていけるのかな?
それに…苦手なりっちゃんと一つ屋根の下に2人きりなんて。
考えれば考えるほど憂鬱になってくる。
「朝からため息ついてんじゃねーよ。」
ふいに後ろから声をかけられて、
驚いて振り向くと、仕込み場のドアに寄りかかった状態のりっちゃんが立っていた。
「――っ!!」
思わず構えた拍子にイチゴを切っていた包丁で指を切ってしまった。
「っ!!ばか!!」
りっちゃんは焦った様に急いで私に近付いてきて、手を握った。
そして――
(え!?うそ……!!)
そのままなんのためらいもなく、切ってしまった指を自分の口に入れた。
「ちょっ、ちょっと!りっちゃん!!」
びっくりしたのと恥ずかしさで思わず手を引っこ抜いた。
「なに?」
さっき慌ててたのが嘘みたい…
何事もなかったかの様に冷静に聞き返すりっちゃん。
「なにって…指!!」
「指?あぁ!消毒だけど?」
それが?みたいな顔をしている。
私はあんなに恥ずかったのに、りっちゃんは別になんとも思ってないんだ。
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