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放課後、りっちゃんを見極めるために朱音は開店前のお店に来ていた。
りっちゃんは先に帰ってきていて、私と朱音を迎え入れた。
「うそ…でしょ…。」
今、私の目の前ではありえない光景が広がっている。
お店のカウンターに座った朱音と、朱音にコーヒーを淹れながら見たことのない笑顔と声で話すりっちゃん。
私にはあんなに冷たい態度で意地悪ばっかり言うのに朱音には優しいんだ…。
なんだか複雑…。
朱音はりっちゃんが淹れてくれたコーヒーを受け取って、お砂糖とミルクを混ぜながら本題を切り出した。
「え?なんて?」
りっちゃんは朱音の提案に驚いたようで作業していた手を止めた。
「萌花が心配なんで、私も住み込みで働こうかなって思ってます。」
朱音は至って冷静に答えた。今は朱音が勇者に見える。
「ダメだよ。」
りっちゃんは急に真剣な顔になった。
「なんでですか?」
負けじと朱音は質問を投げ掛ける。
「だって、朱音ちゃんみたいな可愛い子が一緒にいたら俺…。」
「へ?可愛いって…。」
朱音は拍子抜けした様な顔をしたあと、少し頬をピンク色に染めた。
「だからダメだって。ね?」
そう言ってりっちゃんはそっと朱音の髪を撫でた。
朱音は赤くなってうつ向きながら、小さく頷いた。
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