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トントントン…と、規則正しい音が包丁とまな板の間から響く。
そうしているうちに、コンロにかけていたシチューのお鍋がシュンシュンといいだしたため、お玉でそれをかき混ぜる。
かすみは、鼻歌を口ずさみながら、数週間ぶりに6人分の夕食を作っていた。
ついさっきの、優の体温の温かさを不意に思い出しては、ひとりで顔を真っ赤にしながら。
「…何ひとりでニヤニヤしてんだ」
「ふぇっ?ゆ、優っ」
頭が優のことでいっぱいだったため、いきなり本人が現れ、かすみは飛び跳ねるようにして驚いた。
優はいつもと変わらない仏頂面に仁王立ちで、かすみを見据える。
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