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「あっ…ご飯、取りに来て…くれたの?ちょっと待ってね、すぐにできるから…」
「あぁ…」
いま、キッチンにはかすみと優しかいない。
キッチンとリビングを隔てる引き戸の向こうからは、バラエティ番組の音声と共に、妹2人の笑い声がする。
いまさらながら、芸能人やモデルさんにも曳けをとらないような、格好いい人が自分の彼氏なんだと思うと、嬉しいやら恥ずかしいやらで、まともに優の顔が見れなかった。
優は、普段と変わらないラフな服装で、キッチンの後ろにある食器棚に背を預け、腕を組んで立っている。
背中に優の温かい視線を感じ、胸の奥がきゅう、となって、背筋にぞくぞくする何かが昇ってきた。
それはやがて、頭のてっぺんにまで駆け昇り、かすみを不思議な痺れに酔わせた。
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