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師走
年の瀬のこの時期はどうしてこんなにも道が混むのだろう……
暖かい車内でハンドルを握る手はじとっと汗ばんでいた。
寺岡は急遽入った仕事のせいで、自らがコーチをしていた大学ラグビー部の試合に遅れていた。
焦れば焦る程、道路は遅々として進まず苛つきが募るばかりだ。キックオフからすでに10分が経っている。
今日がリーグ戦の最終試合というのに……
日本で作られた精密な食玩を海外へと売り込む小さな貿易会社を始めた頃は暇で暇で仕方なく、卒業した大学のラグビー部に顔を出しては後輩達の指導に当たっていた。
いつしかクールジャパンという言葉の流行りと共に仕事が軌道に乗ってきた時にはコーチという肩書きが付いていた。
仕事が上手くいくに従ってコーチとしての時間は削られていった。
指導者がいるのといないのでは、練習の質が大きく変わるのは現役時代に嫌という程思い知らされた。
かつて負けたことのなかったチームに苦汁を飲まされた最終戦、くしくも今日の最終戦は同じチーム。
自分がコーチに付いた以上、同じ思いをさせる訳には行かない。
いや、同じ思いをしたくない――
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