連帯感

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「おかしなもんだよな。京とおまえが出会ってなけりゃ、親父達は帰ってこなかったし秋も眠ったままで、もっといえば、京が飛び出してなかったらこうはなってなかったかも。」 和也が言う。 「そうだな。わかんないもんだよな。」 正也が答える。 海とのことがなければ、あの時京をあんな風に警戒もせずに受け入れてはいなかったかもしれない。こんなに京に惹かれることはなかったのかも。 和也が手にそっと鬼火を灯す。 正也も同じように、灯す。 薄暗い部屋に中で銀色の炎がきらきらと煌めく。 母親である皐月と同じ銀色の炎。 炎を通してお互いの存在が伝わって来る。 秋が眠りにつく前に、二人に鬼火の扱い方を教えてくれた。正也はそこで使えるようになった。 その時に言われた。扱いなれるまで、鬼火は不用意に戦闘使用せずに京に教えを請うこと。 それぐらい慎重な扱いが必要だと。 二人の顔が炎に照らされて浮かびあがる。その目がきらりと不気味に光る。 鬼の目。自分たちの中にある鬼。 黒鬼を倒した時に確信した。 自分たちは対なる存在、そして母の分身。 個人として確立しているようで、そうでないはない部分がある。 お互いの繋がり。 和也は自分が正也と京の繋がりを感じているということは、自分と和泉との関係も正也に伝わっているだろうと、恥ずかしさと諦めの入り混じった複雑な気持ちになった。 正也はそんなことはとっくに承知していたので、何と言うこともない顔をしているし、それについては触れてこない。 気恥ずかしさから逃れるように和也は炎を消して立ち上がる。 立ち上がった時に匂いが鼻を掠める。 残り香。 複雑な気持ちになる。 和也は気を取り直して、正也に声を掛ける。 「晩飯の買いもん行ってくるわ。」 「え、ああ。」 正也が和也を見上げる。 「なんかいる?」 「あーっと、俺も行こうかな。」 正也が立ち上がる。 唯一お互いだけが自分と同じ存在。 不思議な連帯感を二人は自覚した。
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