連帯感

2/10
92人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
皐月は見よう見まねでその作業に取り掛かる。 なかなか上手くいかない。 「結構難しいだろ?」 「ほんと、秋って意外に器用よね。」 二人であれこれ言いながらやってみるけれど上手くいかない。 「だめだな。どうやったらあんな細かくなんだ。」 「秋に聞いた方が早いかも。」 正也が和正のオフィスに京を探しに来た。 「京、いる?」 和正は、座ったまま左のほうを見る。 正也は促されるように、その方向を見ると僅かに空間が開いている。 空間が開いていることは分かるけれど、意味が分からない。 確かに、そこに京の気配は感じる。 「なに?」 「さあ、皐月と仲良く遊んでるから。ほっといてやってくれ。」 「なにしてんの?」 「さあ。」 和正は首を傾げる。 正也はしばらく空間を見つめていたが、親父がそういうならと戻ることにした。 「正也。」 「ん?」 「勉強のほうはどうだ?」 「あ、ああ。まあ、なんとか。」 「そうか。がんばれよ。」 「おう。」 「それから」 「ん?」 「京のこと頼むな。」 「え。」 「俺はもうすぐまた海外だ。だから、よろしく。」 「ああ、任しといて。」 正也は部屋を出る。 しばらくすると、試行錯誤する二人の後ろに秋が現れた。 「なにしとんだ。おまえら。」 「あ、秋。」 京がぽかんっと顔を上げる。 大人の姿をしていても、こうして見るとこいつは子供だなぁと秋は思う。 「これ、どうやるの?」 皐月が手を出す。 「ん?」 秋は覗きこむ。 「なんだそりゃ。」 「秋、このまえやってただろ。」 「川であの女の子に見せてたやつ。」 京と皐月が口々に言う。 「ああ。あれね、あれは和正のじゃなきゃできねえよ。」 「えっ、そうなの?」 皐月が驚いた顔をする。 「ああ、鬼火だとそんな細かくなんねえの。」 「へえ。」 京が感心する。 「「じゃあ、やってみようっ。」」 皐月と京は和正の青い炎を手に灯す。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!