連帯感

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帰宅後、和也と正也にも秋が眠りに着くことを伝えると、二人は猛反対。 「秋がいないと困る。」  和也は、秋に詰め寄る。  困った時の秋頼みなのにっ。 「俺もっ。」  正也は秋の腕を掴む。  京と喧嘩したら誰が迎えに来てくれるんだっ。 「なんなんだ、おまえらは。落ち着け、いなくなるわけじゃない。」  秋は二人の反応が意外だったようで、困った顔をする。  その後ろで、和泉と京は三人の様子を不機嫌な様子で眺めている。 「偉く懐かれてんな。」 京が呟く。 「気に入らんな。」 和泉がそれに応える。 「さっさと寝かせた方が得策みたいだな。」 京が言う。 和泉が頷く。 「だったら、全ッ然。俺達が寝かせてやるよ。」 成り行きを聞いた、正也が言う。 「そんなのお安いご用だって、秋。頼むからもうちょっとだけ。俺も正也もまだ不安定だし。」 和也も食い下がる。 「和也、秋は疲れてるんだ。寝かせてやってくれ。」 和泉が穏やかに和也に声を掛ける。 京がそれに続ける。 「それに、おまえたちの不安定な能力じゃまだ秋を永眠、いや、安眠させてやるのは無理だ。」 和也と正也は少し考えて、“そうか”と、秋を掴んでいた手を離す。 「寝てるだけだから、また起きるからよ。そしたらまた遊んでやるよ。」 秋は元気を無くした二人の頭に手を載せてやさしい眼差しを二人に向ける。 「ああ、そうだな。」 「わかった。」 二人は秋を見上げて納得したように微笑む。 それから秋が眠るまでの数日、和也と正也はやたら秋の傍にいた。 秋が座ってテレビを見ている両脇に和也と正也。 学校から帰るなり、京ではなく秋を探しに行く正也。 和泉のオフィスではなく和正のオフィスに入り浸る和也。 「なんなんだ?」 和正が、皐月に耳打ちする。 「秋が寝ちゃうから寂しいんでしょ。二人からみても秋は頼りになって甘えられる存在なのよ。」 「へえ、うらやましいね。」 和正は少し拗ねたように言う。 「父親とは違うわよ。どんな悩みでも相談できる親戚のお兄さんってとこよ。」 皐月は少しおかしそうにいう。 ついに秋は眠りに入った。 秋は以前と同じように部屋で寝ている。
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