連帯感

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和也は朝食の準備をしながら、卵を数えながらふと秋の部屋の方を見る。 毎朝気だるそうに起きて来た秋の姿はもうない。 和也は秋を起こしにいった時のことを思い出していた。 あまりの迫力に圧倒されたっけ。 俺達を気遣い、導く者。 起きていてほしかった。けれど、きっとそうそう関わる存在でもないのだ。 秋の本来の崇高さを思えば、そう自分を納得させる。 正也も席について、秋の姿がないことに寂しさを感じていた。 秋は孤独だった正也の理解者で、何も言わなくてもいつもちゃんと見てくれてた。 自分には京がいる。けれど、それとは別に秋を慕う部分がある。 それから間もなく、和正と皐月が日本を発った。 ひさびさに両親と過ごした数カ月だった。 家族の形は変わったけれど、周りの環境も変わったけれど、二人は何かを取り戻したような感覚を覚えていた。 見送りはいいと言われて、前日に本部で別れを済ませた。 皐月は泣いていた。この数カ月で二人の母親に対するイメージは大きく変わった。自分たちを思ってくれる母であることを知った。父も同じだ。 自分たちはこの二人の子供だということ両親が離婚してから初めてを自覚した。もう二度と手に入らないと思っていた家族が戻った。予想外の形ではあったけれど、それでも一人ではない。 それから数日。 日が完全に落ちる前の薄暗い部屋で、正也は一人ベットに寝転がって、この数カ月のことを思い起こしていた。 学校から帰ってすぐに京は本部へ。正也は家で留守番することにした。 受験勉強をして、少し疲れたので横になっていた。 ノックの音。 すぐにドア開く。 「正也、いるのか?」 「ああ、おかえり、兄貴。」 「どうした?具合でも悪いのか?」 「いや、ちょっと考え事、ってか、この数カ月でいろいろあったなって。」 「ああ、そうだな。」 和也は部屋へ入って来て正也のベットに座る。
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