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「一回でいいからさ、先生の声聞いてみたいな」
きっと優しい声なんだろうな。と、思う。
きっと、綺麗な声なんだろう。
先生は目を細めて、不思議な笑みを浮かべた。
そして、スケッチブックを捲る音。紙を走る鉛筆の音。
その音を聞くと、不思議と心が落ち着く。
『言葉とは何か、君は知っているかい?』
「は?」
思わず間抜けな声をあげる。
そんな僕の前で、先生は嬉しそうに笑っていた。
『僕はね、言葉の魔法使いなんです』
「は?!」
初耳だ。ってか、いやっ、魔法使いって――
「先生、頭大丈夫?」
思わず口をついて出た言葉に、先生の頬がぷっくり膨らんだ。
怒っていると言いたいらしい。
ちょっと乱暴にスケッチブックに鉛筆を走らせ、先生はずいっと、スケッチブックを突きつけてくる。
『言葉とは何だと思う!?』
「え? んー。例えば、僕が今話してる事とか?」
頷きが返ってきた。
「例えば、先生のそれとか?」
それで、スケッチブックに書かれた言葉を指差した。
先生は嬉しそうに笑って、大きく頷く。
そして、再び綴られる言葉。
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