7人が本棚に入れています
本棚に追加
私と薫が、保健室から戻ってきて見た光景は、驚愕でしかなかった。
雄矢は、クールキャラで通っていて、みっともないことは、まずしない。
そんな彼が。
ひっくり返された机の上に散らばった画鋲を、一つ一つ素手で取り上げているではないか。
遠巻きに見るクラスメイトは驚いた顔をしていて
ファンクラブの女子たちはというと、私の方にいっぺんに顔を向けた。
ちょ、軽くホラーなんですけど。
「ごめんね、雄矢君。
でもさ、志穂さん他の男の子とも付き合ってるから、雄矢君バカにされたみたいで、悔しくて。
…志穂さん、うらやましいなあ。
雄矢君に大事にされてさ。
よくよくみたら、志穂さんって可愛いもんね。
ただ、少し髪梳かした方がいいと思うよ」
もちろん、私は誰とも付き合ってない。
雄矢も本気にしてないらしく、一瞬眉間がひくついたが、無視していた。
よくよく見なきゃ可愛いって分からない程度のテンパ女
って言いたいんだろう。
私は溜息をつく。
いいのだ。このテンパは、葱が気に入ってくれてるから。
もし、葱がストレートが好きなら、私は月1でストパーをかけにいくくらいだろう。
今まで、当たり障りのない人生をおくってきたのに、今クラスの中心で睨まれているのは私だった。
でもいい、嫌いな人たちに嫌われたって、なんとも思わない。
私は葱だけを思い浮かべ、机を起き上がらせる。
画鋲を取りおえた雄矢に軽くお礼を言うと、雄矢は私のお礼を無視して、クラスメイトにいった。
「お前ら、いい加減にしてくれよ。
俺が志穂に告白したんだ。
志穂は他の誰とも付き合ってないし
俺も志穂以外と付き合おうとは思えない。
好きなんだ
だから、諦めてくれ。ごめん」
その真剣な声に彼は役者にでもなれるんじゃないかと思った。
最初のコメントを投稿しよう!