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寒い。 寒いよ。
空も白いし。太陽もすこしはやる気だしてよね。
大体なんで空がこんな広く見えるんだろう。
「いたっ…」
気付いたら屋上だった。
そして、痛みを感じたのは膝からだ。そこで私は思い出して
あーと声をもらす。
体育の時間中に走ってて、足を引っ掛けられたのだ。
雄矢のまん前で嫌がらせができない分、雄矢がいないところの嫌がらせが半端じゃない。
それで、また保健室に行くのも惨めで、雄矢を無視して屋上に来たんだった。
「その展開、夏ならともかく
さむっ
もう早退しようかなあ。でもすると葱や薫がなあ」
中途半端に大切にされてるって、もしかして一番面倒じゃなかろうか。
寝返りをうつと、屋上におちていた、風で飛ばされてきたのだろう小石が傷口に入り、私は痛みと、はじめてのいじめの惨めさに涙が出た。
それと同時に、携帯がスカイブルーの色を放つ。
ああ。 なんでこんなタイミングで。
「もしもし」
まるで、恋人の着信のように
私には一人だけ、着メロを変えている相手がいる。
『あ、でたでた。元気か?』
弟だ。
「どうしたのよ」
私はなるべく平静を装って口を開いた。
本当は、泣きつきたいけれど携帯越しじゃそんなことも叶わない。
今朝も会ったのに、また会いたいと思ってしまう。
私の様子とは裏腹に、弟は興奮気味だった。
「こっちさあ、今日すっげぇ盛り上がったんだよ。
俺の親友の提案でさ、クラス全員で数学の授業ボイコットしたら
元々精神病背負ってたらしくって、その教師。生徒殴りはじめちゃってさあ。
隙みて逃げ出して、俺が職員室から他の先生連れてきたんだ!
俺、クラス救った英悠になったんだぜ」
私は自分の体温がさっとひくのを感じた。
「あなたは殴られたの!?」
「いや、その前に逃げれたよ。
親友は殴られたけど…な」
「そうなの…。ったく! 教師なら自分の体調管理くらいして精神がやばいなら家にでも引きこもってなさいよね
葱。クラスメイトも大事だけど
あなたは自分の体を…」
「わーったって。姉ちゃんは心配荘だなあ」
携帯越しにも関わらず弟が笑っているのが目に浮かんだ。
それに、自然と口元が歪む。
それから、弟の低いとも高いとも言えない声音が響いた。
「電話かけた理由、それだけじゃないんだぜ。
姉ちゃん元気かなって」
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