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私は、クラスのギスギスした雰囲気と、どうでもよさそうな教師と、結局何の役にも立たない親友と、何を考えてるのか分からない雄矢を思った。
それだけで涙があふれてくる。
ただ寒いだけの空を仰ぎ、それを抑えた。
「だいじょうぶよ」
声が震えている。
ポーカーフェイスをいう言葉を知らないのか。
誰も見ていないだろう涙がボタボタとこぼれた。
『嘘つけって』
優しい、優しい声がした。
まるで、つつまれているような。
愛されているような。
なぜだろう、嘘なんてつき慣れてるはずなのに、なぜ葱の前だとこんなに弱くなるのだろう。
そしてなぜ
『泣きたかったら泣いていいよ。
言っただろ。
俺が守ってあげるって』
それがこんなにも簡単に許されてしまうのだろう。
私はそれから人の居ないのを良い事にわあわあ泣いた。
聞かれたくなかったら、電話を切ればいいのに、それすらしない。
葱は恋人に語りかけるような優しい声で私を慰め続けた。
本当はもう、そんなに傷ついてないんだけど
その声が聞きたくて私はただひたすらに女の特権である涙を使う。
こんなに惜しげもなくなくのは、アンタの前だけなんだよ。
アンタは知らないだろうけど。
私のその呟きは
誰も居ない屋上に消えた。
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