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学校の廊下は恐怖の対象だ。
それは長いからだろうか。病院と同じで、進めば進むほど薄暗く永遠と続くように感じる。
それが冬で、ましてや落ち込んでいるときだとしたら尚更だ。
「雄矢!!」
聞きなれたソプラノ。
甲高い声が俺の耳を貫いた。
まあ、貫いたというのは比喩だけどそれほどまでに不快なのだ。
画鋲で怪我をした手をポケットに隠すと、俺は振り返り、想像したとおりの女を見下ろした。
「里香」
「ねえ 別れなさいよ」
誰と
とは冒頭についてないが、俺にはハッキリと分かる。
こいつは、俺が笹菜志穂と付き合ったことについてものすごい怒ってる。
志穂と居るときとは違う。
コイツは俺が好きなんだな、という感じがヒシヒシと伝わってくるが、別に俺はうれしくもなんともない。
江元 里香。
俺の幼馴染で、俺のファンクラブのリーダーで
恥ずかしくも志穂の前で
許さない宣言をした奴だ。
俺は恥ずかしくて幼馴染のファンになんかなれないんだが、女は違うのだろうか。
里香の外見は、なんていうんだろう。
よく本屋で並んでいる雑誌の表紙がそのまんま飛び出してきたような感じだ。
まあ、おしゃれっちゃおしゃれだが、個性はない、そんな感じ。
髪はセミロングの茶髪で
目は無駄にでかい。
サクランボ色の唇。
そんな外見で男を魅了し
さらに性格が男勝りなので女子からも人気だ。
志穂が、普通より良いよりの平凡女だとしたら、里香は何もかもが特上だった。
それなりに唆されて、キスだってしたことがあるくらいだ。
でもまあ、二年にあがってからは、ろくに会話すらしない相手になってしまったのだが。
「無理だ」
俺は間を空けて、別れろという言葉に拒否の言葉を吐く。
今の状態だって、付き合ってるともいえないだろうに
俺は投げやりに笑った。
そんな俺の笑みに同情したのか
里香は、俺の服の端をぎゅっと掴んできた。
男だったら絶対ドキドキする動作だろう。
俺も相手が志穂だったら
多分…。死ぬ。
「意味分からない。
アンタの趣味がまったく分からない。
誰から見ても、ウチの方が可愛いじゃん。
幼稚園のころから、お似合いって言われてさ。
どうしてくれるの。
ウチ、雄矢のお嫁さんになるのが将来の夢なのに」
「お前、すごいな」
俺は純粋に褒めた。
この不景気で、高校生でそんな夢をもつ女がいるとは。
国立目指して必死に勉強してる俺はなんなのか。
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