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そんな風にちょっとずれた思考をしている俺を戒めるように里香は涙目になってしまった。
これだから女は。
男の俺はどうすればいいんだよ。
「なに? もしかして志穂じゃなくて薫ねらいとか?
それならまだ納得がいくけどさ。無駄だよ。薫のやつ、雄矢のこと大嫌いじゃん。
自分を好きになってくれる人を好きになりなよ!
その方が絶対幸せじゃん!
不幸になって、なにがしたいの
雄矢。
ウチはどうすればいいのよ!」
「じゃあもう放っておいてくれよ!!」
穏便にすまそうとしてた分、廊下に響き渡った声に俺は自分で驚いた。
里香の目が思い切り歪む。
やばい、泣き叫ばれる…
「よーっす 雄矢
なにやってんだよ」
その声に、緊張がゆるんだ。
どうやら授業が終わったらしい廊下にぞろぞろと他の組の俺の友達が出てくる。
けれど友人三人は俺と里香を見てぎょっとした。
「ちょっ 明らか修羅場じゃねえか! 空気よめよサトル!」
「そっか、そうだよな。里香怒って当たり前か!
雄矢が志穂と付き合ったって噂本当だったんだなー」
「だから空気よめその発言ー!!!」
「空気はよむものじゃない
吸うものだ」
勝手にワイワイ盛り上がる友人達。
その中でサトルは小学校からのサッカー友達だ。
サトルは、俺よりサッカーも勉強も外見も劣っているが、その分、修羅場をいつのまにか収める俺が一番ほしい能力を持っている。
その能力のおかげで、ヒステリックになっていた里香の目からは涙はすっかり消えていた。
やれやれ。一件落着だ。
そう思ったら
「このマザコン」
捨て台詞を吐いて、里香は身を翻し去っていってしまった。
本当に俺を好きな女が言う言葉かね。
俺は溜息をつき、友人三人と向き合う。
「ありがとうな 助かったよ」
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