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それにしても。
俺のせっかくの好意の手をはたきやがって、志穂の奴。
屋上の扉の前、俺は溜息をついた。
アイツを転ばせたのは、俺のファンクラブの一人だった。
実は、俺のファンクラブのリーダーである幼馴染の里香は真っ直ぐなやつで、本人の目の前でしか悪口がいえない。
だから、靴をかくしたり、机に細工したり、噂話を広めたりなどの姑息な手は里香も把握しきれてない別の奴らだったりする。
大体、そっちのほうが質が悪い。
で、志穂が足を引っ掛けられたのを遠くからみてた俺は、わざわざ体育を中断し、駆けつけ保健室までエスコートしようとしたのに…
志穂は、というと
「雄矢君には関係ないでしょ。
」
の一言で俺を拒絶し差し伸べた手を軽く叩いたのだった。
ああ。思い出してもむかつく。
屋上にいるかも、と思ったのは、ただのカンなんだけれども。
「で なんでお前はこうも単純に見つかるんだろうな」
「んー。葱ー」
「…?」
屋上の扉を開けたら、予想通り志穂が予想外の格好で屋上の真ん中に居た。
携帯を抱え込んで寝息をたてているではないか。
寒いってのに
ていうか 葱?
人の名前?
え!? なに? コイツもしかして彼氏居たの?!
「いいいや、でもいる素振りなかったし、だとしたら俺のことフる為にそういえばいいわけで
俺のこと殴ってでも拒絶すればいいじゃ…」
自分でも動揺して何を喋ってるか分からない。
てか、なんでこんな心臓が独りでにバクバクし、めったに汗をかかないのに手汗が半端ないのかも分からない。
おかしい。里香とキスしたときだって、こうはならなかった。
ああ、こんな感じか、で終わりだったのに。
志穂の寝顔を見ていると、余計心拍数は上がっていった。
やばい。このままじゃ血管が破裂して死ぬ。
「俺は… っていうか起きろ! 志穂! 風邪ひくぞ!」
俺がそう怒鳴ると、志穂は不快そうにうっすらと目を開いた。
クリクリとしたブラウンの瞳が、きょろりとのぞく。
「んー? ああ、電話したまま寝ちゃったんだ…」
電話? もしかして、その
葱
って奴と?
「な、なあ俺は別に微塵として気にしちゃいないんだが
いや本当にどうでもいいんだが
葱ってだれだ」
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