7人が本棚に入れています
本棚に追加
俺がそういうと、志穂は驚いた顔をした
「葱は私の弟よ。なんであなたが知ってるの」
なんだ。てっきり他校の奴か何かかと思った。
俺は弟と聞いて安心する。
「何でってお前が寝言で言ってたんだろうがよ」
「え!? うそ、うわー恥ずかしいー、あ、雄矢君。右手怪我してるね」
明らか話題転換のためだったが、よくもまあ、こんな小さい怪我に気付いたものだ。
女子ってすごい。
というか、志穂がすごいのかもしれない。
どうでもいいフリをして、ちゃんと人のことを見てる。
志穂は、そういうやつだから。
何もしらないけど、それだけは知っている。
志穂は屈んだままの姿勢で、ポケットから絆創膏を取り出した。
女子ってそういうのを常に持ち歩いてるものなのだろうか。
志穂のイメージには合わなくて、驚いた。
はられた絆創膏は、なんだかよれよれとしていた。
「うわ、失敗しちゃった」
肝心の怪我の部分が覆えてない。なんて不器用なんだろう。
でも俺は多分この絆創膏を永久保存するだろう。
俺がそんなことを考えていると、俺の怪我を、画鋲によるものだと気付いたらしい。
志穂は気まずい顔をして、それから俺を見た。
「あのさ、 雄矢君。別れようよ」
ああ。言われると思った。
だから、俺は傷ついてないような顔を作った。
「こんなの、よくないと思う。
確かに、雄矢君にとってファンクラブにからまれないのは、メリットかもしれない。
でも、私を庇うせいで怪我をするくらいなら、それはこの上ないデメリットじゃない?
今はこんなのだからいいけど、これからもっとひどくなると思う。
だから、ね別れよう」
志穂が何を言ってるのか分からなかった。
俺がファンクラブに構われたくないから?
だから告白したと思ってる?
俺はコイツの中で、そんな最低な男でしかない。
ああ、そうか
だったらそれでいいよ
それでいいから。
「嫌だ」
こんなところで終わらせないでくれよ。
最初のコメントを投稿しよう!