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「そりゃー… 百パーそいつ姉ちゃんのこと好きだろ」
呆れた声が、薄い唇から漏れた。
町外れにある洒落た店内で
私と弟は、学生らしくコイバナをしていた。
まあ、どちらも本気じゃない恋愛だからコイバナといえども
味気のない話だったが。
「なんでそう思うのよ」
私はさっぱり分からなくって、弟に尋ねる。
すると弟は大げさに天井を仰いだ。
「だって、発言からするに、自分の思い通りにならないから騒いでる、恋愛経験のない中2じゃん」
「恋愛経験豊富な雄矢君に限って…ありえないでしょ」
レストランの天井には、決して高価そうではないが、天使の羽が散りばめられたデザインのシャンデリアが垂れ下がり、店の雰囲気を華やかなものにしていた。
これをテレビで見て、可愛いな。と発言したところ
弟が調べてつれてきてくれたのだ。
そして今に至る。
どうやら今日はおごりらしい。
最近バイトがうまくいってるんだとか。
忙しない飲食店では働けないだろうから、心配していたのだが
上の人から好かれ、うまくやっているようだ。
「恋愛豊富なほど見失うものもあるんじゃねえの」
レストランに入ってから、まだそう時間はたっていない。
葱は氷水をすすって、なにやら大人っぽい? ことを言っている。
「大体、雄矢君と私の間には好きになるような接点がないんだよ。
だからやっぱおかしい」
私がそう言い切ると、先ほどから 雄矢の話ばかりだな
と呟いたあと、葱は
じと目でこちらを見てきた。
「でもさあ。
姉ちゃんきっと後悔するぜ?
この先雄矢ほど完璧な男って
でてこないっしょ。
なんで雄矢を拒むんだよ。
何であれ、そういうのは互いに告白しなおしちゃえば、うまくいくもんなんだよ」
「そんな訳ないじゃん。
ていうか、なに、私にそんなに彼氏作ってほしいわけ」
私も弟も、なんだか面白くなくなってしまう。
いや、面白くないのは私だけか。
私はいつも、葱が家に彼女を連れてきたらどうしよう
笑えるのだろうか、なんて心配をしているのに
葱は知ったこっちゃないように
私に彼氏を作らせようとするから…。まあ、当たり前か。
それが姉弟というものだ。
「ま、とりあえず この話はやめようか」
そういったのは葱だった。
安心した。
そう、今の葱の一番は私。
なら、それだけでいいじゃないか。
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