交差する激情

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一通り食べ終わった後 葱は会計の金額を片手に肘をついていた。 「大丈夫? 私もお金もってきたけど」 「いいよいいよ、別に 元気だしてもらいたくってサプライズしたのに 払わせたら意味がないだろ」 もし今、一緒に来られただけで十分嬉しい、と言ったらどうなるだろうか。 まあ、言わないのだけれど。 私がそんな風に考えていると、 葱は急に真剣な眼差しをこちらに向けた。 「なに?」 「…やっぱさ。 雄矢にからまれて、いじめられてるんだろ。姉ちゃん でも、誰にも同情なんてしてもらえないだろうな。 イケメンに振り回されてます、なんて普通はムカつく話じゃん? そういうのは、いつかまわりが飽きて許してもらうか卒業まで我慢するかのどっちかなんだよな。 でさ、ねえちゃん、最終的に そいつと付き合うの?」 そういった語尾が… 少し不安気に聞えたのは きっと私の願望だ。 「そんなわけないでしょ」 私がそう言い切ると、葱は 食べ終え汚れた皿に視線を落として呟いた。 「そ。  よかった」 なにが良かったんだろう。 出来れば説明してほしかったが ふと、気になる匂いがした。 白い煙が、こちらに流れてくる。 私はもう少し長居しようとしたが立ち上がった。 しかしそれを葱に止められる 「会計は此処でやるんだよ」 「あ、そっか。てか、知ってたわよ。うん」 そう曖昧に呟いて、私は座りなおす。 会計にきたウェイトレスはやたらと胸が大きくて。 葱は見ていたように感じた。 私も胸が大きければいいのだろうか。 いや、関係ないだろう。 恋愛対象にならないのは姉だからだ。 それ以外の、なにものでもないのだ。
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