突然の告白

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「ごめん 私なんかしたっけ」 いつも その男 は遠く クラスの中心に居た。 交わることのないはずの視線が私を貫いている。 誰かが喧嘩でもしたのだろうか。地べたにガラスが突き刺さっていて、私は自分の顔をそこから覗いた。 ひどい顔をしてる。 別に不細工ではない。テンパは気になるものの、平均の高さの鼻や小さい口やクリクリした目は可愛いといわれることもあるくらいだ。 ひどい というのは表情のことだ。 この世の終わりの様に強張っている。 「嘘の告白なら、他の誰かにしてよ」 冷たい切り替えしに、男はむっとした。 「なんで嘘って決め付けるんだよ」 「だって!」 ギザギザの髪に、胸元からのぞく髑髏のネックレス。 男物の香水をまとった、モデル体系の優等生。 噂で聞いたことがある。 父は医者で…。叔父は教授だとか。 母方の話はなぜだか聞かないが…。 とりあえずこの男―…。 武島雄矢は学校1のモテ男だ。 私は堰を切ったように話し出す。 「私と貴方じゃ吊り合わないし! そもそも話したこともないよね!?」 「あるよ。忘れたのか」 「それも数回程度でしょ、しかもあいさつとかそんなん! 一体何企んでるのよ? あぁ、やっぱ、話さなくてもいい。 とにかく私貴方と付き合うとか ないんで」 付き合ったらファンに殺される。 それに、雄矢だって気持ち悪いはず。 なのに私の断りに、雄矢は悲しそうな顔をした。 上手い演劇だ。そうやって女を落としてきたのだろうか? 「わかったよ。 お前がそのつもりなら…。ファンの奴らに俺の告白断ったって告げ口して、お前の立場なくしてやる」 「はあああ!?」 「それがいやだったら付き合え。 あと、今日は一緒に帰るぞ。 以上」 一方的な決め付けをし、雄矢は悲しそうな顔はどこへやら。 爽やかな笑みを浮かべ去っていった。 空がよどんでいる。 嫌な予感のままに帰っていれば、こんなことには。 告白されたその日―…。 私のは心はひどく虚空だった。
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