突然の告白

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事情はまるで分からない。 大体、一緒に帰るって言っておきながら、雄矢は校舎の方へ戻ってしまった。鞄を取りにいったのか それとも何らかの部活にでも向かったのか。 分からないが、待っているのは御免だ。 私は鉛のように重い足を引きずり体育館裏から離れた。 離れる前、ふと誰かに今の告白を見られなかっただろうかと、危惧し上を見るが図書室ぐらいしか、この死角を見える範囲はなかった。 大体、目撃したらその場で騒いでいるだろう。 私は溜息をついて校門へ向かう。 このまま先に帰ってしまえば雄矢も愛想をつかすだろうと思ったからだ。 「よぉ。姉ちゃん 近くに寄ったから、待ってたぜ 帰るついでに予備校まで自転車で送ってってくれよ」 よく、悪い事のあとには良い事がある、というがどうやらそのようだ。 校門の向こう側 弟が立っていた。 私はそれだけで 鬱々とした気分がパッと明るくなって、それを悟られたくなくて俯いて とめてあった自転車に跨り 勝手にのれば と言い放った。 私がバランスを整えると同時、後輪の自転車にかかる、一人分の体重。 やばい 心臓がはちきれそう 二人乗りは毎回距離が近くて私にとっては難関なんだ。 「と、友達といけばいいじゃないの わざわざ私と…」 「別にいいじゃん。本当は姉ちゃんの言うとおり友達と行こうとしたんだけどさあ。 今日さあ その友達と一緒に歩いてたら、ソイツ。道端に落ちてるタバコ、わざわざ走って踏み消しに行ってさあ …それが姉ちゃんの動作にそっくりで。 そう思うと、会いたくなっちゃったんだよ」 家で会えるのにバカじゃないの!? と思いながらも、私は運転の方に集中した。 「あんた、そんな姉ちゃん姉ちゃん言ってると、友達無くすよ」 「だってさ、友達と違って一生の付き合いじゃん 姉ちゃんのほうが」 それを聞き、嬉しい自分がいやになった。 姉より友達が大事。 じゃあ、いつか出来る彼女とは? そんなの、比べるまでもない。 私は一人笑う。 それを見て、弟は嬉しそうな顔をした 「よかった、なんか姉ちゃん元気なさそうに見えたから 恋の悩み?」 私は一瞬ぎくりとする 「いや、そんな訳ないか 姉ちゃんが恋なんてなあ」 「私だって恋くらいするわよ、 ばか」 本当、バカ。 弟は 葱は 誰に? なんて質問はしてこなかった。 それが少しだけほっとして そしてやっぱり、すこしだけ悔しいんだ。
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