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チャイムが鳴る。
授業の終わり
いや、悪夢の始まりだ。
先生が出て行ったと同時
私は普段関わるはずはないだろうクラスの中心の女子に囲まれていた。
「ちょっと志穂さん? これはおもしろい冗談か何かよね?」
助けなきゃ、やばいとか言いながら動くつもりもないだろう私の友人の影はすでに教室の奥にあった。
ただ、親友の稲原薫だけが、声を荒げている。
「あんたら、そろいもそろってなんなのよ! 雄矢の追っかけでもやってなさいよ!」
そんな薫の叫びは知ったこっちゃない、という装いをする女子。
そして男子はというと
「な、なあまじで? 雄矢」
「ああ。そうだよ。付き合ってる。大事にするつもり」
などというやりとりをしていた。
つーか、なんつー紳士的な返し方だ。
告白されたあの後。
雄矢について色々考えてみた。
そして思い至った
雄矢はきっと、ファンの女子がしつこすぎて勉強に集中できないから、自分を好きにならないだろう女子と付き合ってガードを作りたかったんだろう。
そう思うと、どんどんイライラして。そしてどう見ても、そんな魂胆は見え見えなのに…。
「志穂さん! ちょっと廊下に来て!」
彼女らにはどう映っているのだろう、と私は溜息をついた。
私が動かないで居ると、それを抵抗かなにかと勘違いしたのか乱暴に腕を引っ張られた。
そして視線だけでも逃げようとそらすと、黒板の文字が視界に飛び込む。
志穂が雄矢に告白した!
雄矢断りきれず!
まさかの敵現る!
などとズラズラ書いてある。
一時間目の数式なんか、その文字の横に追いやられてるではないか。学業を何だと思っているのか。
まるで黒板が広告代わりだなあと思っていると、私は廊下に連れ出されていた。
相手の女子は6人。体系もあちらの方がずっと大人らしい。
さすがに女の子同士だから暴行はないだろうが
とりあえずどう逃げようか…。けれど作戦を考える前に、私の後を追うように雄矢が教室から出てきたではないか。
「雄矢君…?」
「ああ、お前は黙ってな」
「あ、あの、ゆうや…」
急に、ファンの子がおどおどし始める。
ふん、本人を前にするとそんな態度か。
けれど、目に涙を一杯に浮かべて震えるクラスメイトは可愛かった。
私が同性ながらに見惚れていると、そんな彼女らに雄矢は笑顔で言い放つ。
「俺の女に手ぇだすな」
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