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まるでそういう打ち合わせをしてたかのように、可哀想に。
ファンの子達は泣き崩れてしまった。
私はそんな彼女らを見て、弟から見た昨日の私も、こんなに情けなかったのだろうか、と
ふと思った。
弟…葱が予備校から帰ってきたその玄関先で、私は結局泣きついてしまった。
そして、雄矢に告白されたことを告げた。
「へえ! すっげえじゃん。
武島雄矢っつったら、他校にまでファンいるくらいだよ
サッカーで全国大会でたの知ってる?
でも、その話が本当だとすると姉ちゃんいじめられるだろうなあ。
もし雄矢ってやつが姉ちゃんのこと守りきれなかったら
俺にいってよ。
俺が守ってあげる」
私は思い出して、どこかぽわんとしていた。
しかし視線の先に居たのは雄矢だった。
「んだよ、その顔」
「ああ、思い出しにやけ。
気にしないで」
「ただの変態じゃねえかお前…」
雄矢と軽口を叩き合っていると、ゆっくりと、ファンクラブのリーダの女子が立ち上がった。
セミロングの茶髪を揺らしながらこちらを睨む。
その目に涙はなかった。
どうやら、ファンクラブの中でもこの人だけは強気らしい。
「宣戦布告よ! 志穂。
雄矢が付き合ってるって言っててもね!ウチはあんたを許さない」
本当。
勝手にやっててくれ、と思うことの中心に自分がいるなんて。
私はなんで私として産まれてきたのだろう、とさえ思った。
けれど、その考えは間違いだ。
だって、私は私でなければ
弟に、葱に会えていない。
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