変った日常

5/7
前へ
/70ページ
次へ
まるでそういう打ち合わせをしてたかのように、可哀想に。 ファンの子達は泣き崩れてしまった。 私はそんな彼女らを見て、弟から見た昨日の私も、こんなに情けなかったのだろうか、と ふと思った。 弟…葱が予備校から帰ってきたその玄関先で、私は結局泣きついてしまった。 そして、雄矢に告白されたことを告げた。 「へえ! すっげえじゃん。 武島雄矢っつったら、他校にまでファンいるくらいだよ サッカーで全国大会でたの知ってる? でも、その話が本当だとすると姉ちゃんいじめられるだろうなあ。 もし雄矢ってやつが姉ちゃんのこと守りきれなかったら 俺にいってよ。 俺が守ってあげる」 私は思い出して、どこかぽわんとしていた。 しかし視線の先に居たのは雄矢だった。 「んだよ、その顔」 「ああ、思い出しにやけ。 気にしないで」 「ただの変態じゃねえかお前…」 雄矢と軽口を叩き合っていると、ゆっくりと、ファンクラブのリーダの女子が立ち上がった。 セミロングの茶髪を揺らしながらこちらを睨む。 その目に涙はなかった。 どうやら、ファンクラブの中でもこの人だけは強気らしい。 「宣戦布告よ! 志穂。 雄矢が付き合ってるって言っててもね!ウチはあんたを許さない」 本当。 勝手にやっててくれ、と思うことの中心に自分がいるなんて。 私はなんで私として産まれてきたのだろう、とさえ思った。 けれど、その考えは間違いだ。 だって、私は私でなければ 弟に、葱に会えていない。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加