- 第二節 疑念 -

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 「あの子が家出したのはあんたのせいだからね!!」  玄関をくぐる私の耳に、金切り声が飛び込んで来る。どうやら私は今、家出した扱いになっているらしい。  「なんだと…?お前が加減も知らずに叱りつけたから家出したんだろうが!!」  「じゃあ、あんたが叱れば良かったじゃない!あんたが父親として叱る時しっかり叱ってくれていれば、私が叱る必要はなかったのよ!」  喧嘩だ…夫婦喧嘩だ。自分の娘がいなくなったというのに、支え合うでもなく、責任の押しつけ合いの為に喧嘩をしている。“叱る時しっかり叱って”…なんかダジャレみたい。  「俺だって仕事で疲れてんだよ!」  「私だって疲れてるわよ!仕事を免罪符にしないでよ!」  「免罪、って…人を犯罪者みたいに…!こっちはお前達家族の為に必死で働いてんのに、その言い方はなんだ!」  ごちゃごちゃうるさいな、二人共…結局、お互いに責任押し付けるしか頭に無いんじゃん。もうさ、一生やってなよ。ていうか、本当に私のこと大事ならさ、ケンカしてる暇あったら探しにおいでよ。  ……あ、そっか。私、今家出扱いなんだよね?娘のこと何も知らないから、家出先に見当も付かないか。そっかそっか。
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