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「誰…?」
問いかけてみるが返事は無い。あのおじさんではないのだろうか?暗闇で体型もろくにわからないが、誰かがそこにいることはどうやら確かなようだ。その人物は、懐中電灯の光を、空中で静止する私の体へ向けて照らしている。
あの日の私を知っている…?一体誰が…。
こんなところに人が来るはずはない。だからこそ、私があの日行おうとした行為にとって、ここは絶好の場所だったのだ。まさか…自ら命を絶とうという私の行動は、この世のものではない“何か”を呼び寄せてしまったのだろうか?
鎧を着て刀を持った武士の霊を見た、という人がいるくらいだ。懐中電灯を持っている霊がいたとしても不思議ではない。ましてや、今や私は“そちら側”にこそ近しい人間。実際には懐中電灯の光は発せられていなくとも、私の意識がその姿を“生前の姿”として捉えてしまっている可能性は充分に考えられる。
確認する為、私は恐る恐るその人物の前面に回り込んだ…―と、その時
「あ゛ああああ!!」
その人物が叫び声を上げた。私は驚いて腰を抜かしてしまった。
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