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私は身構えた。しかし、その人物はそのままバタリと後ろ向きに、土の地面に倒れ込んでしまった。目の前の私が見えていないのだろうか…?
「あいつ…早く帰って来ないかな…」
星空を仰ぎ見てその人物が呟く。やはり私のことを知っているのか?…―そうだ。あのおじさん以外に、もう一人あの日の私を知っている奴がいる。それに、この声…―
私はその人物の顔を、暗闇でもはっきりと識別できるほどの距離まで思いきり覗き込んだ。
「あぁーっ!やっぱりアンタかよ!」
私が目の前で大声を上げても、驚く素振りも見せない。やはり私の姿は見えていないらしい。
それは紛れもなく“あいつ”だった。死のうとした私を勝手に助けておきながら、私を置き去りにして、先に“答え”を見つけちゃった、あいつ。
…体に戻ったこいつが、今更私になんの用があるというのだろう。よく見ると、懐中電灯とは逆の手には切れ味の良さそうなサバイバルナイフを持っていて、時折それを見つめては、何かを決意したように表情を強ばらせている。
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