- 第二節 疑念 -

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 何を考えているのだろう…―彼の背後には、毛布や、パンパンに膨らんだ巨大なリュックサックまで覗き見えた。私がこの体に戻るのを、ここに寝泊まりしてまで待ち続けるつもりだろうか…?一体何の目的で?  “今この瞬間も目の前に私の体がある”のだから、そのナイフでロープを切って助けようとでも思っているのであれば、今すぐにでも助けられるはず。しかし、彼がそうする気配はない。となると、傷付ける為…?それも、傷付けても無反応な今ではなく、この体に私の意識が戻ってから、ということか?  もしそうだとしたらすごくショックだな…確かに何度かキツい衝突はあったけど、そこまで恨みを買うなんて…―  「絶対助けるからな…」  彼が呟いた。  “助ける”…?やはり助けてくれるつもりなのか?…それともあの時、私の命を勝手に救ったことを後悔して、“魂を救う”という意味での“助ける”…―つまり、やはり私を殺すつもりなのか?  真偽はわからない…推し量るほど親しくなるには、一緒にいた期間があまりにも短すぎた。いや…ずっと一緒にいても親しくなることなどなかったのかも知れないけど。
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