- 第一節 孤独 -

3/8
前へ
/109ページ
次へ
 男は眉の皺を一層深めて言った。  「…そうか。短い付き合いだったな。」  これだよ…勝手に助けておいて、面倒になったら勝手に見捨てる。こんな大人ばっかりだからこの国はおかしくなっちゃったんだ…きっと。  男は背を向けて去っていく。その背中はすぐに見えなくなった。“この状態”になってから、初めての独りぼっちだ。普通に生活している人の視界には決して映らない、本当の独りぼっち。  私は膝を抱えてその場に座り込んだ。  やっぱりヤダよ…もう…。なんで“あいつ”は答えを見つけられたのかな?  あのおじさんは、あいつが生きる道を選んだって言ってたけど、なんであんたは生きたいって思ったの?  辛いことは幸せになる為の試練だ、って言う人たくさんいるけどさ…辛いことの方が、幸せなことの何百倍も何千倍もあるじゃん。  辛いことを一杯経験したまま、幸せになれずに死んでいく人一杯いるじゃん。  成功した人が自分の半生を肯定したくて、今が辛い人が未来を信じたいだけだよ、あんな言葉。真実じゃない。  …もう死にたい…本当に死にたい…
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加