- 第一節 孤独 -

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 他者を傷付けるのが本当に嫌なのであれば、私たちは食べずに餓死することが出来る。あるいは自害するという選択が出来る。植物を命と捉えないなら、肉を食わずに生きるという選択肢もある。ということは、命を奪う行為は決して『仕方なく』などないのだ。  結局のところ私たちは、どんなに体よく理屈付けたところで、性欲や、他者を傷付けたいという加虐欲同様、『食べたい』という食欲、あるいは、栄養面を考えて『健康でありたい』と願う生存欲という、単なる欲求に従って他者の生存権を奪い続けているに他ならない。  真に食べられる側の立場に立って考えるのであれば、『生きる為には殺しても仕方がない』ではなく、『“殺しても仕方なくなどない命”を、生きたい、食べたい、という自らの欲求に従って、進んで奪い続けている』ということになるが、それを理解し、自覚している人間は少ない。  自分を肯定し、正当化する為に、まるで本当は生きたくないかのように、生きることを義務付けられているかのように、『生きる為には仕方がない』などと自分本位極まりない屁理屈をこねながら、『命をいただくことに感謝しなさい』と無自覚に善人ぶる者が大半だ。
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