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「辰川 篠。…辰川?おい、辰川はまた休みか?」
ざわざわとざわめく朝のSHR。今日も学校に登校していないらしい辰川君を呼ぶ担任の声が響いた。
辰川君はあまり授業にも参加する方じゃなかったし、遅刻してくる方が多い、所轄不良…みたいな人だった。
だから、学園に来ないのもまたいつもの事なんだろうなと僕は思っていたが、どうやら今回はそうではないらしい。
担任の不審そうな声に辰川君の親衛隊に所属するクラスメイトが手を上げておずおずと話し出したのだ。
辰川君が三日前から寮に帰っていないこと。辰川君がよくいたという屋上やサボりを行っていた場所にもいないこと。
…それに、どういうわけだか知らないが、三日前の朝、辰川君の荷物と携帯が東棟の階段の踊場の鏡の前に置き去りにされたままになっていたこと…。
それを聞いたクラスは騒然となった。
寮に帰っていないどころか、荷物や携帯まで置いていったということならば、もしかしたらなにか事件に巻き込まれたのかもしれないと。
この学園の生徒達は皆、主に金持ちの家の出だ。
だから、身の代金目当てとかいうのも有り得ない話しじゃない。
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