247人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
何があったかは火を見るより明らかだ。
しかし、詳細を聞くためには彼が目覚めた時に本人に聞く他はない。
だが…。
無理矢理体を蹂躙された彼にそれを突きつけ、問い詰める事が、果たして本当に彼の為になるのだろうか。
聞いてしまったら、思い出させてしまったら、彼は彼でなくなってしまうかもしれない…。
「…っ、ごめんな。」
私は小さく彼に謝って顔をあげると彼の手を離して彼を見つめた。
私にはきっとなにもできない。
せめてもの願いは彼の心が砕けない事を祈るだけだ。
辛くてもこれから生きていくうえできっと向き合わなければならない時がくるだろう。
そして、辰川くんはそれを何度も何度も乗り越えなければならない。
なんにせよ私ごときが気安く詮索するべきではない。
最初のコメントを投稿しよう！