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遊びを邪魔された彼は暫く不服そうに低い唸り声をあげたり傍に侍らせていた醜い魔物に当たり散らし、漸く落ち着いたのか魔物からもぎ取った腕をガリガリと噛み砕きながらまた鏡から自分の獲物だった篠を見つめ…。
ふと、 ある人間に目を止めた。
雄だ。それも先程の奴よりか少し年を重ねているらしい雄。
髪は明るい茶色だが、変にいじったりしたわけではなく、多分元からああなんだろう。
普段なら気にもとめないような平凡で特に特徴もないような輩だが、どうやら獲物を逃がした人間はそいつに好意を寄せているらしい。
『……。いいな、アレ。』
じっとその人間を観察していた彼はそう言うと口角をつり上げた。
『アレを取り上げたら、あいつはどんな醜い顔をして嘆くか…。いや、取り上げるだけじゃ面白くねえな。……そうだ。闇に堕ちるまでの過程も全部見せてやろう。ククッ、楽しみだなァ。』
心底愉快だと言うように高らかに笑い始めた彼の声が暗い闇に響き渡り、そんな彼の傍らでうずくまっていた醜い魔物たちは各々恐怖に竦み上がり身を寄せ合った。
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