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「…じゃ、じゃあ、ぇ、っとぉ……。先生の…キ、……ぅとか…。」
「ん?すまん、もう少し声を大きくしてもらえるか?どうも聞き取れない…。」
漸く口を開いたと思い、身を乗りだすようにして聞き手の体勢をとるも肝心の部分が聞こえず私は眉を寄せてそう願い出た。
それにしてもこんなに近くにいる生徒の声も聞き取れないなんて…もしかしてもう年なんだろうか。
「えと…だから…!」
人知らず悩んでいる私に若干顔を赤くしながらもパクパクと鯉のように口を開閉する涼谷君。
しかしこの涼谷君の反応はおかしすぎるだろうに。
余程恥ずかしい要望なのだろうか?スイーツが好きだからスイーツをとか。男子高校生は色々と気にしがちだから有り得ないこともないだろう。
別に私は気にしないし茶化すつもりもないのにな。
それでも下手に急かすのは流石に可哀相な気がしてきたからそのままじっと待つ。
と、暫くあうあうとしていた涼谷君はあああああ!と唐突に奇声を発した。
「ああもうっ!ムリッ!!そんな純粋な目で見られたら言えない!言えっこないしぃいいい~!」
「は?ええと、涼谷君?大丈…」
「待ってる時の顔もヤバいし、つかつか眉下げながら首傾げて悩むとか!!拷問だよおぉ!!」
「……。」
ふおぁおおお!と尚も吠えて壊れたようになった涼谷君に、私はポカンと口を開けて間の抜けた顔をすることしかできなかった。
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